Column

2020/01/01

日越結婚物語「第10回:新婚旅行 花の大東京!後編」

前回までのあらすじ

 僕は1994年にホーチミン市へ赴任。妻との運命的な出会い。そして僅か半年で、プロポーズ。いろんな過程を経て、晴れて夫婦となり日々、過ごしていた。ある日、直属の上司&日本の社長から、

「仕事の進捗報告かついでに、日本旅行でもしないか?」

 との有り難い厚意を受け、急遽帰国。その間を利用して結婚披露宴を開くことになった。妻をはじめ義父母も今回が人生初の海外旅行。見知らぬ異国の地、ニッポンで戸惑いながらも実家のある岐阜羽島に到着。ついに1995年11月23日、岐阜羽島の地で披露宴を挙行した。両親や親戚、友人、ゲストの皆さんから盛大な祝福を受け、いよいよ僕らの新婚旅行が始まった。今回は前回の”東京編(前編)”に続き、”東京編(後編)”である。場所は、東京全日空ホテルの朝食会場からはじまる。

朝から良く食べること

 「この料理の中で、料理見本は、どれ?」

 開口一番、そう質問してきたのは義父である。一夜明け、ホテルの朝食はビュッフェスタイル。料理の質・ 量とも目を見張るばかりで豪勢このうえない。義父は数日前、関空で入ったビュッフェで、料理見本として飾られていたロウ製見本を本物の料理と間違えて、 会計に持って行ってしまったのだ。そのことを想い出したのだろう。僕は、

 「ここの料理は全て本物ですから、どうぞ、食べられるだけお好きな物を食べて下さい」と、笑顔で応えた。

 ここのビュッフェの料理は、いずれも、ベトナム人家族にとって、初めて見る、そして初めて口にするものばかり。物珍しさも手伝って、めいめいお皿がテンコ盛りになるほど種類を取り席に戻ってきた。僕は、(そんなにとってきて食べられ!るのか?)と、心配しつつも、それは直ぐ杞憂に終わった。なぜなら、途轍もなく凄い勢いで、次から次へと料理は彼らの胃袋に収まって行き!、モノの5分としない内に一皿ペロリ。特に義父は、全種類の料理を食破する勢いで俄然、闘志を湧かせており、気がつくと、彼の目の前に食べ終えた皿が一気に6枚積み上がった。ボーイが皿を回収するよりも早く食が進んだというわけだ。

 ミッシェルとカトリーナ、弟と僕は小食な質で、それぞれ2皿で、満腹。義母とかみさんとニュンは、それぞれ3皿目に突入しながら、何やら小声で話し合っている。どうせ、食べてる料理のことを話しているのだろうと、 取り立てて気にも止めなかった。僕は、食事を続けているベトナム人一行をビュッフェに残し、今日の仕事の資料再確認のため中座した。しばらくしたのちビュッフェに戻ると、義母とフエン、 それに、かみさんの食べた皿が更に5皿ずつ増えていた。全くよく食べるものだと半ば呆れたが、余程口にあったのだろうと何も言わず好きにさせた。

弟の添乗業務

 朝食後、ホテルのフロントで大きめの荷物を纏めて明日の宿泊地、京都のホテルヘ発送手続きを済ませた。そう、身軽にして 東京ディズニーランドと明日の京都散策をする作戦だ。それに僕自身、今日は丸一日仕事なので、弟一人に一行のアテンド兼カメラマンを任せなければならない。余計な荷物は邪魔なだからね。

 弟一行は、公共交通機関を使っての移動。「弟ひとりだけで大丈夫かな〜」

と心配しつつも、 彼に

「午後7時に数寄屋橋交差点角の交番前で落ち合おう」

と、告げ彼らを見送った。

 スーツ姿にアタッシュケースを持った僕は、赤坂・渋谷・新宿・赤羽と各取引先を訪問、ひとつずつ順調にスケジュールをこなして行った。時は瞬く間に過ぎ、腕時計を見ると既に午後6時。JR赤羽駅から、待ち合わせ場所があるJR有楽町駅に移動。 待ち合せの有楽町交差点交番前に到着すると、そこには先に疲れた顔をした一行が、辺りにへたり込む様に座っていた。弟を以外、 みな手に手に、ミッキーマウスの風船を空にたなびかせていた。弟にわけを尋ねると、

 「ベトナム勢が欲しがったし、迷子にならぬよう風船を目印代わりに買い与えた。」

 と言う。混雑するディズニーランドで、目立つ風船はちょうど良いと、ついでにミッシェルやカトリーナにも買い与えたらしい。「弟よ、君は天才か!!」しかし、想像してみて欲しい。銀座のド真ん中で、大の大人6人が、 揃いも揃って連れだって、ミッキーマウスの風船を手にし、雑踏をぞろぞろ歩く姿を、、、!!!

 かみさんと相談し、義父母に風船を処分するようお願いしたのだが、普段大人しい義母もこれには大反対!! 呼応するように義父もニュンも、そしてあろう事か、かみさんも異を唱え、ベトナム人メンバーと同調し、うんうんと頷いている。仕方ない、少し恥ずかしいが旅の恥はかき棄てと、そのまま放っておくことにした。「日本初めてなんで」

 と言えば、免罪符になるだろうと祈りつつ 、、、。

銀座で鱧(ハモ)料理

 今夜の食事は取引先の社長さんが、一席設けてくれる事になっている。7時半に社長は、お抱え運転手付きの大型高級外車に乗って交番前に現れた。車を降りると、くだんの6つのミッキーマウスをジロジロと見ている、、、やはり気になるようだ。無理からぬ。そこで、僕は社長に訳を話し謝罪した。

 「済みません。ベトナムからですから、、、」と僕。

 「まあ、そりゃそうだな。でも、白人さんもいるぞ。気にするな。」と、社長は豪快にカラカラと大きく笑った。社長は運転手に先に帰るよう促すと、近くにあるという予約したお店まで歩いてゆこうと僕らを誘った。

 やがて目指す和食店についた。渋い純和風の入口で、如何にも、“一見さんお断り風”の敷居も値段も高そうなお店である。社長いわく、ここは鱧料理専門。連れの外国人一行はおろか、これまでの人生の中で、僕も弟もハモなどという魚を食べたこともなければ見たこともない! 社長を筆頭に一行が、縄のれんをくぐると、カウンター越しに「いらっしゃい!」と板さんからの威勢のよい呼び声がかかった。その一瞬、板さんの顔の表情が強張ったのを僕は見逃さなかった。

 無理もない、僕ら一行の頭上には例の風船が揺れていたのだから、、、気働きの鋭い社長は、即座に板さんに鋭く一言「外国のお客さんたちだ。頼んだよ!」と放ち、その場の空気を替えた。鱧の調理を眺めながら料理を楽しめるようにと、僕らは横一列でカウンターに席を設けて貰った。そしてハモを小骨ごと細かく刻む職人芸を楽しめ、社長の粋な計らいに感謝した。小気味よくシャリ、シャリ、シャリっと一定のリズムで刻まれてゆくハモに皆の目が釘付けだ。そして板さんの手から魔法の様に鍋物・焼き物・煮物・酢の物・香の物が次々と出て来て、やがてお腹も膨れ、みなご満悦! 因みに、今回の料理は全て“時価”。社長には散財をかけてしまった。みんなで何度も、お礼を述べて、お店を後にホテルへ戻った。

ごめんよ 全日空ホテル!!

 部屋へ戻ってしばらくして、弟が、ビデオカメラを片手に僕らの部屋にやってきた。ビデオを再生しながら、彼から本日の昼間でかけたディズニーランドでの様子を見ていると、場面は昼食風景に変わった。芝生の上で、敷物を広げ、その上にたくさんの料理を並べ思い思いにおしゃべりしながら美味しそうにとる食事。あれ?どこかで見覚えのある料理ばかり!!なんと、今朝ホテルで食べたビュッフェがいくつか混ざっていたのだ。そういえば、食事中、かみさんと義母、そして義妹のニュンの三人で額を寄せ合い話している光景を思い出した。

「ごめんよ!東京全日空ホテル!」

 と、窓辺で懺悔する僕の目の先に、東京タワーの灯りが青白く優しく周囲を照らしていた。明朝、新幹線で一気に京都経由で奈良へ入る。いよいよ新婚旅行も後半に突入だ。次回は関西で、何が一行を待ち受けているか! どうぞ、次回もお楽しみに。

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